宮崎県立図書館は創立120周年記念として、「図書館」・「本」をテーマとした短歌を
募集。応募総数は約670点。たくさんの方にご参加いただきました。ありがとうござい
ました!
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【最優秀賞】
図書館は大いなる街いま僕は旧友探す旅をしている
(宮崎市 久永草太)
【優 秀 賞】
[1]露光る紫陽花抜けてバス停へ かばんの中で本飛び跳ねる
(宮崎市 宮本朝美)
[2]好きな本 ならべて作る マイ図書館 今日の音楽 梅雨の雨音
(佐土原高校 大衛里胡)
[3]好きな本隣の君も読んでいて世界と世界が重なる夕暮れ
(宮崎西高校 川越優羽)
[4]いつもなら見ているだけの僕だけど本の中では主役になれる
(宮崎北高校 蛯原斗真)
【佳 作】
[1]図書館を 頭の中で 作りたい それほど私は 本が好き
(宮崎大宮高校 新山恵未)
[2]午後三時棚から棚への小旅行見知らぬ私と出会う図書館
(宮崎市 坂尾美香)
[3]コロナ禍に貸出し停止の絵本らが所在なさげな小児科の棚
(宮崎市 西村三智)
[4]弟に読み聞かせする小三の語りやわらか絵本へ誘う
(日南市 菊地純子)
[5]病室のベッドでポツンと読んだ本トモダチになった漱石と僕
(延岡学園尚学館高等部 山内路加)
[6]色あせたさくらんぼの絵さようなら 遠いあの日の父の手と本
(延岡学園尚学館高等部 花岡杏吏)
[7]図書館の とびら開けば 別世界 静かな空気 背すじがのびる
(都城農業高校 丸山莉奈)
[8]本を読む 読み終わった時 気付くはず 今までのとは 違う世界に
(都城農業高校 馬越優月)
[9]筆者達 長年かけて 導いた 答えを本で 学ぶ喜び
(佐土原高校 小野心響)
[10]本読むと 広がる想像 また一歩 自分の為の 未来予想図
(宮崎北高校 油田みすず)
[11]学びたい知りたい多くの答えあるしかし本自身は問いかけるだけ
(宮崎北高校 日髙蒼士)
[12]一瞬で飲みこまれるこの世界観 次々めくり読み進める手
(宮崎北高校 安藤愛)
【選者(伊藤一彦氏)の選後評】
この度の「図書館・本を詠む」短歌に、多数の良い作品が寄せられた。本好き、図書
館好きの人の作品は、私も本好きなので、大いに共感して読んだ。賞の選考には迷うほ
どだったが、最終的にすばらしい作品を選べたと思う。
最優秀賞の久永さんの歌は、図書館を「大いなる街」と思いきって歌っているのがい
い。「街」は人と出会うところであり、図書館は出会いの場所なのだ。作者は自分をよ
く知っている「旧友」を探すという。「旧友」とは日本の古典かもしれないし、ヨーロ
ッパの近代小説かも知れない。作者の「旧友探す旅」が心豊かであることを祈る。
優秀賞は四首ある。宮本さんの歌は、図書館で本を借りた喜びが強く伝わってくる。
大衛さんの歌は、「マイ図書館」の発想がユニークで楽しい。川越さんの歌は、本を通
じて結ばれる二人が清々しい。蛯原さんの歌は、読者の醍醐味を見事に表現している。
佳作の歌も優秀賞の作に劣らずとても良かった。